ご存じじゃない方も多いかと思うので、今日はガムの危険性を知らせておきたい。
犬にガムを与えることはごくごく一般的に広まっている。実は、このガムの事故は多くて、重大な危険があるのが明白だ。これが人の食べ物だと、間違いなく社会的な問題となるだろう。犬だから許されているのか?犬を飼っている人にとっては、そんな考え方が通用するはずがない。犬だって、生きて人生を楽しもうとしている。それを奪ってはいけない。
私は今年に入って、ガムの事故は記憶にあるものだけで3件ある。食道に詰まったチワワ、咽頭部に詰まったポメラニアン、そして、本日は腸閉塞を起こしたM.ダックスが来た。チワワは転院したので、その後の状況は不明、腸閉塞は手術、そして、咽頭部のポメラニアンはなんと死亡している。口を開けたら喉一杯にガムが詰まっていたのだ。何度も動物の病気を見てきた私でさえ、寒気を感じ、その後、はけ口のない憤りを感じた。もちろん、病院へ到着するまでに自宅で亡くなっていたはずだ。こんな最後はあまりにもかわいそすぎる。苦しかっただろう。
このガムのどこに問題があるのかと考えると、少ない唾液で適当に湿ったガムは非常に粘り気を持つものがあるようだ。過去には、U字に並んだ左右の歯列の間の硬口蓋にベタベタとしたガムがくっついて取れなくなっていたことが2度あった。これは手ではとれなかった。ペンチのような強い力で取れた。これが喉や食道で詰まることは、十分に予測できる。
私たちでも経験はないだろうか?私は、飴玉を舐めていて、何かに夢中になったとき、ふと大きな飴玉を飲み込みそうになったことが何度となくある。当然、犬たちもあるだろう。小さな犬が大きなガムを飲み込むのは、自分の意思で飲むこともあるかもしれないが、誤って飲み込むこともあるだろう。
他にも歯が折れる、かけるという事故も見かけるが、その数はもっと多くなる。
ちなみに、犬の歯は固いものを咬むには向かない。もともと、犬の歯は、やわらかい肉を引き裂く、ちぎるという機能は果たすだけのものだから、固いものを強く咬んだり、人の臼歯のように咬み続ける機能は果たさない。そのため、固いものを咬むと、歯が折れることがある。それも大きな臼歯がよく折れる。なぜなら、犬はこの歯でガムを咬むからだ。歯が折れて露髄すると抜歯か歯内治療といった、やっかいな治療が必要だ。数か月前、歯が折れて露髄した犬の上顎第4前臼歯を抜歯した。歯内治療は獣医療では、まだまだ浸透していない。当院も歯内治療はできない。だから、大きな歯を失うことは決して少なくない。記憶にあるだけで、第4前臼歯の抜歯は他に2件ある。
ガムによる露髄は、原因がわからない外歯瘻(眼の下の頬から膿が出る)の一因になっているかもしれない。ただ、この点は私にはわからないが、あってもおかしくない気がする。
本日もそうだが、これまでにガムの事故を見てきた私は、うかつにガムを与えてはダメだと言い切ることができる。もちろん、全てとは言わないが、一部のガムは、生死にかかわる重大な問題を起こすことがあるということを覚えていて欲しい。